北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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とかち機構

岩本 聖史さん

#17「地域に根ざした支援機関として、商品開発や販路拡大などの取り組みを通じて地域の課題解決・活性化に取り組む」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!

今回は、地域の課題解決・活性化に向け、十勝の農産品・加工品の商品開発・販路開拓支援や十勝企業の海外展開支援などの取り組みを行う、(一社)とかち地域活性化支援機構(略称:とかち機構)の岩本さんにお話を伺いました!

とかち機構 岩本 聖史さん

プロフィール
岩本 聖史さん(いわもと きよふみ)

1976年札幌市生まれ。札幌南高校、北海道大学を卒業後、1999年北海道中小企業家同友会事務局へ入局し札幌本部勤務。札幌では産学官連携研究会(HoPE)を担当。その後、苫小牧事務所事務局長、とかち支部事務局長などを経て、2018年6月、とかち地域活性化支援機構設立にあわせて専務理事・事務局長に就任。2020年3月とかちリージョナルネットワーク株式会社を設立、代表取締役就任。2010年より帯広地域雇用創出促進協議会事務局長に就任。現在に至る。

農商工連携や商品開発・販路開拓、地域の雇用促進や国際協力など、多岐にわたる活動

――とかち機構はそもそもどのような経緯で設立されたのでしょうか?

(岩本さん)元々は、北海道中小企業家同友会とかち支部が受託していた国や自治体などの委託事業、補助事業などを行う団体として、同友会から事業を引き継ぐ形で設立されました。当時、同友会では、行政や支援機関、大学などとの連携を深めながら、中小企業の経営環境や地域をより良くするという目的のもとに活動を行っています。その中でも、従前から受託していた農商工連携や商品開発・販路開拓、地域の雇用促進や国際協力などに関する委託事業をとかち機構で実施しています。

――同友会で行っていた事業も含め、販路開拓についてはどのような支援事業を行っているのでしょうか?

(岩本さん)商品開発・販路開拓については、同友会が帯広市と共同で事務局業務を行っていた帯広地域雇用創出促進協議会が厚生労働省から受託した雇用創造事業(2005〜2020年)の中で、2010年に同協議会事務局長に就任してから一貫して取り組んできました。販路開拓の事例としては、首都圏のレストランのシェフやスーパーマーケット、百貨店などのバイヤーなどを十勝に招聘し、生産現場を案内、売り手と買い手のマッチングを図る地域商社事業を2012年度に開始しました。ちょうど帯広市でも「フードバレーとかち」の取り組みが始まった頃ですね。この事業については、当時、「十勝のブランド全国展開総合商社事業(Tobgetとかち)」として取り組んでいた成果やネットワークを生かして、同プロジェクトの担当であった岡田昭彦氏が、プロジェクト終了後に地域商社「おかだ商産」(帯広市)を設立して事業を継続し、発展させています。

――商品開発についてはどのような支援事業を行っているのでしょうか?

(岩本さん)商品開発の事例としては、帯広市の「まつもと薬局」が同協議会の「マーケット対応型商品開発事業(食ラボとかち)」(2014-2017)の中で取り組んだ果実酢製造の技術を活用した初の自社ブランド商品「幸福de酢」を開発しました。現在では同社の人気商品となっており、この商品が自社商品開発の起点となったと聞いています。また、その後、食ラボとかちの経験を引き継い新規プロジェクト「とかち帯広の地域資源を発掘し磨く新商品・新サービス開発事業(クリサポとかち)」による商品開発プロジェクトの中で生まれたのが、十勝地サイダーで10番目のサイダー「帯広ビーツサイダー」です。帯広市の地域資源である「ビーツ」をジュースにする取り組みの中で、ビーツジュースを原料とする形で帯広ビーツサイダーは産まれました。十勝地サイダーの取り組みは、2012年に池田町のぶどうサイダー(当時は、十勝ワイナリーぶどう果汁サイダー)から始まったのですが、同友会が持つ十勝管内事業者のネットワークを活用して他の市町村にも広がり、現在では12種類のラインナップで販売されています。十勝地サイダーの卸、小売業務については、とかち機構から生まれた別法人とかちリージョナルネットワーク株式会社が担っています。
 なお、帯広地域雇用創出促進協議会(2018年~)や十勝地サイダー研究会(2022年~)の事務局業務については、現在はとかち機構が引き継いで事業を実施しています。

十勝地サイダーをPRする岩本さん(左)。LANDでも絶賛販売中です!

――十勝の事業者の海外展開支援に関する事業としては、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?

(岩本さん)十勝企業の海外展開支援に関する事業については、元々帯広市から同友会に、経済産業省の補助事業を活用して海外販路開拓事業をしてみないかというアドバイスをいただいたことから始まりました。そこで当時のプロジェクトリーダーの尾藤光一氏(尾藤農産代表取締役)がターゲットをシンガポールに設定し、展示会の出展や商談会の開催、十勝の食材をシンガポールのキーパーソンに味わってもらう「十勝ナイト」の実施、現地の高級スーパーでのテスト販売などに取り組みました。その中で多くの成果が得られたのですが、特筆するとまずは農産品などを輸出したいと考える北海道の事業者と、北海道から商品を仕入れたいと考えるシンガポールをマッチングさせる(株)PRIME STREAM北海道が音更町に設立され、シンガポールにはPRIME STREAM ASIA PTE.LTDが設立されました。これは音更町で穀物卸を行っている「山本忠信商店」が中心となって運営されているプロジェクトです。また、シンガポール高島屋には菓子製造販売の「柳月」(帯広市)が進出しましたし、それらの取組から「十勝シンガポール友好協会」の設立機運が高まり、シンガポール日本人会が主催する日本語スピーチコンテストの副賞として高校生の部の入賞者を冬の十勝へ招聘し、地元高校生などと交流する取組みが続いています。これは、商品の売買といった一過性のものではなく、お互いの人的な関係性を大事にしていきたいという想いから実施しているものです。

――JICA北海道(帯広)とはどのような協力事業を行なっているのでしょうか?

(岩本さん)同友会時代に2013年から2019年まで、JICAの草の根技術協力事業において、モンゴルでの「農産物の安定供給のための貯蔵技術改善・普及プロジェクト」や、「農産物等の流通改善および土壌改良による農業者の収益向上事業」といった事業を行っています。十勝と気候の似たモンゴルに農産物の貯蔵管理システムを構築する前者の事業では、同友会がネットワークを持つ様々な分野の十勝の事業者が集まって実施したプロジェクトです。地域にこれだけ根ざしている同友会組織は全国的にも珍しいのではないでしょうか。
 こういった十勝の事業者の海外展開支援に関する事業や国際協力に関する事業についても、現在はとかち機構が引き継いでいます。

モンゴルの草原での1コマ(2017年)

JICA草の根技術協力事業でモンゴルのボルノール村に建設された農産物直売所(2017年)

モンゴルでの農産物貯蔵庫建設の様子(2014年)

シンガポールのスーパーマーケットでの十勝産品のテスト販売の様子(2014年)

農産物の六次産業化を推し進めていくためには農商工連携がこれからも重要

――商品の販路開拓や海外展開については、針穴に糸を通すような難しい調整が求められる取り組みのように思えますが、十勝産の農作物や商品の販路開拓について、現在はどのような点に課題があるとお考えでしょうか?

(岩本さん)まず、農作物などの加工に関する課題が大きいと考えています。商品の販路を開拓するためには消費者側のニーズに合わせて商品を改良していく必要がありますが、現在は加工の部分が十勝管内での完結を難しくしている状況です。特に夏から秋にかけての農産物の収穫時期に、大規模なロットでの農作物などの加工に対応できる余裕のある工場が十勝には少ないという現状にあると考えています。農作物は収穫してから時間をあけずに加工する必要がありますし、十勝では通年で安定的に原材料が供給されない点が影響しているのだと思います。
 また、食品の品質管理の面では、GAP認証(※農産物(食品)の安全を確保し、より良い農業経営を実現するために、農業生産において食品安全だけでなく環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組みに対する第三者機関からの認証制度)やHACCP認証(※食品衛生管理規格に対する第三者機関からの認証制度)を受けていないと、そもそもその商品を取り扱ってもらえないといったケースもあるようですし、有機食品については有機JAS認証(※農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本として生産された食品に対する検査認証制度)を受けるのは生産者に加えて加工処理工場にも求められる場合があります。
 そのような課題の認識が当然にあっても、現状では人手不足の問題や設備投資が必要な場合もあり、事業者はなかなかそこまでは手を出せないという状況にあるのではないでしょうか。帯広市のフードバレーとかち人材育成事業でもそのような食品の認証に関する勉強会を行っていると思いますが、もっとそういった課題に関する関心が広がり、課題解決に取り組む方々が増えれば良いなと考えています。

首都圏販路開拓調査の様子(ヤオコー(埼玉県)、2022年)

首都圏販路開拓調査の様子(和郷(千葉県)、2022年)

(岩本さん)上述の点に加え、「餅は餅屋」と言いますか、商品開発や加工技術、販路開拓など、それぞれに強みを持っている事業者同士がお互いに上手く連携していく必要があると考えています。元々自分達が持っている経営資源を互いに持ち寄るべきです。そういった意味で、十勝産の農産物の六次産業化を推し進めていくためには、十勝の中での農商工連携がこれからも重要であると考えています。とかち機構では、そういった事業者同士を上手く繋げ、連携促進するための触媒のような役割を果たしていきたいですね。

「地域の課題が何なのか?」「地域活性化のために何が必要なのか?」ということにスポットを当てて、必要とされることは何でもやっていきたい

――今後、とかち機構としてはどのようなことに取り組んでいきたいとお考えでしょうか?

(岩本さん)これまでは商品開発や販路開拓、高齢者、若年者の就労支援事業などを行ってきましたが、「地域の課題が何なのか?」「地域活性化のために何が必要なのか?」ということにスポットを当てて、必要とされることは何でもやっていきたいという心持ちです。時代に求められるものに応じて、新たな取り組みにどんどん挑戦していきたいですね。新たな課題が発生すればそこに焦点を当てて事業を育て、とかち機構を卒業していくような事業が生まれていけば良いなと考えています。

「地域にしっかりと根ざし、十勝の方々にまずはとかち機構に相談してみようと思っていただけるような機関でありたい」と語る岩本さん。
同友会時代から続くこれまでの着実な実績に裏打ちされたお話は非常に説得力のあるものであり、特に商品の販路開拓に対して十勝が抱えている課題の部分については大変勉強になりました。

LANDとしてもとかち機構の皆さんの活動を応援していきます!

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とかち機構

協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会

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