北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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メムロピーナッツ株式会社

藤井 信二さん

#41「『畑作4品』にピーナッツが加わる!? 十勝・芽室発、新規作物から見える未来とは?」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!

北海道・十勝では、小麦、甜菜(ビート)、馬鈴薯(じゃがいも)、豆類の「畑作4品」と言われる基幹作物を中心に大規模な輪作が行われています。この畑作4品に、落花生(ピーナッツ)が加わるかもしれない!?そんな未来を描く生産者・経営者の藤井さんに、新規作物の取り組みについてお話を伺いました!(聞き手:LAND 高橋)

メムロピーナッツ株式会社 藤井 信二さん

プロフィール
藤井 信二さん(ふじい しんじ) 代表取締役

1982年生まれ。白樺学園高校を卒業後、20 歳で販売業に就職。32 歳で就農し、芽室農協青年部の活動に参加する中で落花生栽培に取り組む。2017年に十勝めむろ落花生生産グループを立ち上げ、本格栽培をスタート。2019年にNTTグループ、エア・ ウォーター十勝食品ら数社と十勝グランナッツ合同会社設立。十勝を「新たな落花生の産地へ」と掲げ、歩んでいる。

主産地「千葉県」に対して勝ち目はある?落花生の生産に取り組む理由


――国内で流通している落花生の9割は輸入で、国産は1割ほどだそうですね。しかもその国産落花生も、生産量が減少しています。減少している理由はなんでしょうか?

(藤井さん)理由は、シンプルに生産者の減少です。なぜ生産者が減少しているかと言うと、生産者の高齢化。主産地である千葉県を中心として、落花生は小〜中規模の生産者が多く、機械化が進んでいません。手作業が大変で生産を辞めてしまうケースが増えています。

――価格競争や需要減が理由ではないのですね。では、藤井さんは、手作業が多く、生産するのが大変な作物である落花生の生産に、なぜ取り組んでいるのでしょうか?

(藤井さん)始まりは、販売を前提にせず、試験栽培に取り組んいる若手農家のグループが十勝にあることを知り、自分もそこに参加させてもらったところからです。そのグループの試験栽培が2016年に終わることになり、「落花生の栽培を本格的にやりませんか」と、私から声をかけたのです。

芽室町は町内の42%が農地。畑作4品を中心に、スイートコーンなどの生産も盛んな地域です。甜菜の育苗ハウスが空いている時期に落花生栽培ができれば有効活用にもなりますし、道内には食品メーカーの加工場も多いので、生産が安定すると出荷先も見込めるのでは、という読みもありました。

また、日本における落花生の主産地である千葉県に比べて、十勝は気温が低いものの、落花生を育てられそうな手応えを試験栽培で感じていました。千葉の落花生農家さんからは、生産に関するサポートもいただいていましたが、生産を増やしていく段階では「十勝で大規模に生産してほしい。収穫できた全量を買い取る」と言っていただいたのも大きかったです。国産需要が存在していることを実感として持てたことは、大きな後押しでした。

千葉県のノウハウを芽室町で実践、寒暖差を活かして甘みのあるピーナッツが誕生


――落花生の作物としての側面についてお聞きします。千葉県産と芽室産では違いはあるのでしょうか。

(藤井さん)千葉県産の落花生はもちろんおいしいのですが、千葉の人から芽室産の方が甘みがある、と言われたことがあります。十勝の昼夜の寒暖差が影響していると言えるかもしれません。また、十勝のほうが土地が広いこともあり、作付面積を大きくしやすいという利点もあります。

――他にも何か違いはありますか?

(藤井さん)千葉では基本的に収穫した落花生を屋外で干すのですが、芽室では何度も失敗しながらも乾燥の方法を試行錯誤してきました。今ようやく、芽室ならではの落花生栽培や乾燥方法など、少しずつ見えてきたところです。

――他の作物と比べて、反収はいかがですか?

(藤井さん)今年(2023年)は8ヘクタールで50トンの収穫がありました。収益については反収、つまり同じ量で比べるなら、小豆の3~4倍くらい良かったといえるでしょうか。もちろん、この夏は暑すぎて、小豆の収穫が芳しくなかったということもありますが、落花生がこの先伸びてくるかもしれませんね。

――十勝において、「畑作4品」と並ぶ作物になる可能性はあると考えていますか?

落花生は「豆」なので、小豆や大豆と作物的に大きく変わるものではありません。なので、畑作4品の中に加えて生産することは十分可能だと考えています。収穫機械や、収穫後の乾燥や焙煎、そして販売などのことも考えなくてはなりませんが、十勝で言うと、現在生産している小豆や大豆の一部を落花生に置き換えることから始められます。

それに落花生はピーナッツとしてアメリカやヨーロッパをはじめ、アジアでもよく食べられていて、作れば売れないということはほとんどないはずです。十勝なら大規模な栽培もできますし、大きな可能性があると考えています。

個人が始めた取り組みが、JAの取り組みに成長!


――試験栽培から始めて約10年、生産者の数も増え、個としての動きから組織としての動きになっているのではと思います。現在の生産者数や販売体制について教えてください。

(藤井さん)現在(2023年12月)はうちの藤井農場を入れて11戸の生産者で生産しています。メムロピーナッツは最初、販路が無いところから始まり、自分の個人名で売ったりもしていたのですが、少しずつ取引先も増えてきたので、販売を担う位置付けのメムロピーナッツ株式会社を2020年に設立しました。11戸の生産者で作った落花生は、原料の状態でメーカー等に販売するか、メムロピーナッツ株式会社に卸して加工品として販売するか、というのが2023年の春までの流れでした。

(生産者は若手が中心)


――現在は体制が変化しているということですか?

(藤井さん)2023年7月に、JAめむろ(芽室町農業協同組合)に落花生生産組合ができ、原料販売は落花生生産組合が担うことになりました。

――個人の取り組みから、JAとして取り組むことになるということは、事業として成長し、経済性や地域性が認められた、ということではないでしょうか。

(藤井さん)そうですね。でも最初に生産を始めた時、落花生を本格的にやりたいということでJAに相談したんですけど、当時の反応は厳しかったんです。まだうまくいくかどうかも分からない状況だったので仕方ないですよね。JAめむろの組合員数は約600戸なのですが、やっぱりそれなりにお金を使って事業を行う以上、ある程度数字や実績が見えないとJAの事業としては厳しいな、というところです。

なので「じゃあ、自分たちでやります」ということでスタートして、色んなハードルを越えて、ようやく取り組みが認められ、JAに声をかけられるくらいになった、という状況です。

ーJAめむろと連携して取り組むことで、倉庫や設備などのアセットを活用でき、生産規模を拡大できたり、販売面や信用面でもメリットがありそうです。

(藤井さん)はい。落花生は乾燥工程に手間かかり、千葉県などの産地でも手作業でおこなっているのですが、JAめむろには乾燥設備があります。原料の受け入れから、乾燥・保管、メーカーへ原料供給する役割をJAに担ってもらえることで、僕らは安心して生産ができますし、生産量を拡大することも可能になります。メーカーなどの取引先にとっては、事務手続き面でもやりやすくなったのでは、と感じています。

ピーナッツ生産を全道に広げ、北海道を一大産地にしたい!


――YouTubeでの動画配信や、オリジナルグッズの販売など、一方的な広告・営業ではなく、ファンを広げる活動に重きを置いていますね。どのように販路を広げていますか?

(藤井さん)最初は生産量も限られていたので、原料販売ではなく、個人向けの商品として「ゆで落花生」の販売をおこないました。地元スーパーでの取り扱いが始まったことで、他のスーパーからも「うちでも売りたい」と声をかけていただき、その後も「うちでも」「うちでも」と広がっていきました。ありがたいことに、積極的に営業をしなくても、販路が拡大するようになってきました。

――国産落花生の需要を実感するエピソードですね。芽室産落花生・メムロピーナッツの将来像についてお聞かせください。

(藤井さん)需要に応えるためにも、大規模生産を確立していきたいと考えています。自分たちだけが生産するのではなく、十勝の他の市町村でも生産する人が増えて欲しいし、その際にはノウハウなども提供します。更には十勝だけでなく、北海道全域で、生産する方が増えて、最終的には北海道が落花生の一大産地になることを目指しています。メムピー(メムロピーナッツ)という名称にもこだわりません。

とはいえ、すぐに大量生産とはいかないでしょうし、それに海外産の落花生よりも安く提供する、というのは現実的ではありません。そこで、北海道の寒暖差を生かし、甘みが強く食味のいい落花生をブランド作物として育て、それと同時に加工品のコラボレーションなども増やして、ブランドとしての認知拡大も少しずつ行っているところです。

たとえば、札幌市にある池田食品さんとのコラボ商品「メムピーキーマカレー」「ピーナッツペースト」のほか、ピーナッツバター、落花生ジェラートなどの開発も行っています。その他、「芽室落花生祭り」の開催やイベントへの参加、SNSやYouTubeでの魅力発信なども積極的に行っています。
今後は、JAを通じた原料販売と、コラボを含む加工品販売を二本柱に考えています。将来的にはピーナッツを料理に用いたり、豆菓子として親しんでいるアジア各国への輸出も視野に入れています。

落花生は機械化が全く進んでいない!?


――これまでの取り組みは順調に行っているように思います。これから更に生産を拡大させ、北海道が落花生の一大産地になるために、課題やボトルネックはあるのでしょうか?

(藤井さん)機械化が鍵だと感じています。冒頭でご説明した通り、千葉県などの産地では小〜中規模の農家さんが主体で、収穫などの機械化は全くと言っていいほど進んでおらず、落花生を収穫するための機械は日本にはありません。現在は中国から輸入した収穫機を使用していますが、使い勝手やメンテナンス面で難があります。

生産拡大するためには、様々な面で機械化は必要で、それは国内の落花生生産においては初めてとなるチャレンジです。十勝には中小の農業機械メーカーも多くあります。落花生を生産する人が増えて機械の需要が増えれば、落花生関連の機械を開発してくれるのではと思いますが、現在はまだその段階までには至っておらず、その点がボトルネックと言えるかもしれません。課題解決に力を貸してくれる方がいれば、ぜひお声がけいただけたら嬉しいです。

(「メムピーTシャツ」もオンラインストアにて販売中!)



編集後記
芽室町には、個人の取り組みが地域を動かし、大きくなっていく例が既にあります。ファーマーズマーケット「愛菜屋」がそれで、生産者さん有志6人が1993年に始めた無人店舗が、今では一大販売拠点・観光拠点に成長しました。

芽室ピーナッツの取り組みは、十勝だけに止まるものでなく、全道、全国、海外にも波及する可能性を秘めています。生産者、農業機械メーカー、JA、食品メーカーなど、それぞれが連携して大きな動きになっていく未来に向けて、LANDも力になりたいと思います!

また、「自分のところでも落花生を作ってみたい」「落花生栽培について知りたい」「コラボ商品を検討したい」という方がいれば、藤井さんはアドバイスやサポートを惜しまないということです! 興味・ご関心のある方はLANDまで遠慮なくお声かけください!(LAND高橋)

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YouTubeメムピーチャンネル

協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


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