北海道帯広市の事業創発拠点「LAND」

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株式会社明治

藤本 和英さん

#54「”できたて”乳製品で食卓時間を思い出に変え、酪農と共に豊かになっていく新規事業」

十勝の事業創発につながる企業の取り組みを、LANDスタッフが取材し掲載する「LANDSCAPE」!
今回の主人公、株式会社明治藤本和英さんは、社内公募制の新たなプログラム「Meiji Business Development」から出発し、現在、新規事業立上げの第一番目の案件である「できたて乳製品事業」の立上げを行い、フレッシュなミルクのおいしさを届けるチーズブランド、「FRESH CHEESE STUDIO」を始動させました。北海道十勝産の乳を使用した、出来立てのモッツァレラチーズを作ってその場で味わえる体験会などを実施しています。そんな藤本さんの乳製品や食に対する情熱をお聞きしました。
(聞き手:帯広市経済部 相部)

株式会社明治 藤本 和英さん

プロフィール
藤本 和英さん(ふじもと かずひで) ブランドマネージャー

1978年6月6日生まれ。2002年に(株)明治に入社。営業部、商品開発部、マーケティング部で、乳製品(チーズ/バターマーガリン/カレー、スープ等)、銀座カリーブランド等の開発やマーケティングなどに従事。
社内公募制の新たなプログラム「Meiji Business Development」=明治主体でイノベーティブな事業の立ち上げを「本気で」目指す独自のプログラムから、新規事業立上げの第一番目の案件である「できたて乳製品事業」立上げから、実証店舗での販売を進行中。
十勝できたてカードを軸とし、十勝産農林水産物と併せた国内外の展開、高級飲食店などへの販路拡大を見据えた取り組みを計画している。

"乳"を長年見つめてきた明治だからできること


──ではまず、フレッシュチーズスタジオの事業内容についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

(藤本さん)フレッシュチーズスタジオ(以下、FCS)では、その名前の通り、フレッシュチーズの乳製品の製造・販売を行っております。具体的に言うと、大きく分けて2つあるのですが、1つが、FCSが運営する店舗でのフレッシュチーズおよびフレッシュチーズを使ったメニューの販売です。もう1つが、FCSで製造したブラータやモッツァレラチーズをレストランに提供する事業です。中でもビジネスとして面白いのが、そのフレッシュチーズになる前のチーズの素である「カード」と呼ばれるものをレストランなどに卸して、そこで新しいメニューとの組み合わせを可能にすることだと思っています。
 FCSのコンセプトは、十勝産ミルクのフレッシュなおいしさと、そのワクワクする感じを、 出来立て乳製品にして都市部までお届けし、そこで楽しめるということ。十勝のフレッシュなミルクの豊かな風味をお届けすることはもちろん、高品質でこだわった食の魅力(酪農家、農家、シェフなどのこだわりも含め)を伝えるとともに、“できたて”体験をとおして楽しい食事時間を創造することです。
 カードというのは生乳に酸などの酵素を作用させてできる凝固物から、ホエイを抜いたものになります。まさにミルクの塊であるカードを「十勝カリアータ」と名付けて、FCSでの原料として使ったり、「半製品」として、加工する前のチーズの原料としてお客様にお届けしたり、 レストランに販売したり、といった用途を考えています。風味の良さはもちろんのこと、素材としての自由度が高くカードからモッツアレラの生地を好きな形に成形なども可能です。

十勝カリアータ

好きな形に成形


 この十勝カリアータが持つ非常にフレッシュなミルクの風味によって、イタリアンだけではなく、例えば和食のような、様々な業態やカテゴリーとの組み合わせを実現できると考えています。十勝カリアータ自体は十勝の工場で作っており、その半製品をこだわりの冷凍技術を用いてフレッシュなままいろいろな地域に持っていき、新しい体験を生み出していくところが大きなポイントになります。

──ありがとうございます。次に、そういった事業を始めた背景、例えば、事業環境でしたり、社会背景などといった点について教えていただけますか?

(藤本さん)社内での新規事業立ち上げが奨励されていたことで、大きなチャンスがあったということが挙げられます。 私は、元々日本の丁寧なものづくりや食に興味がありまして、その日本の食を支えている明治に入社しました。今回のプロジェクトでも、食に対する思いや、丁寧なものづくりを世の中に広めたいという考えがベースとしてありました。
 特に、"乳"を長年見つめてきた明治だからこそできることがあるはず、という思いがありましたので、先述したような新規事業の提案をしました。その中での気づきとしては、日本人は新鮮な魚や野菜、炊き立てのご飯に挽き立てのコーヒーなど、そうしたものを敏感に感じ取る非常に繊細な味覚を持っていることが挙げられます。その気づきを受けて、まだまだ世の中に広がっていない、フレッシュチーズの魅力を広めていきたい、“乳”が持つおいしさ、新しい発見を届けていきたいという風に感じたことが、この度の事業の始まりになりました。

出来立ての“乳”のおいしさを皆様に“体感”してほしい


──なるほど。では、なぜ十勝でその取り組みを始めようとお考えになったのでしょうか。藤本さんご自身のことも含めて、お聞きできればと思います。

(藤本さん)まず、十勝に関して言うと、先ほどの「“乳”を長年見つめてきた明治」という話の通り、酪農王国十勝の非常に豊かな「食」が根幹にあります。一方で、十勝の外の人々からすると、なかなかその場で出来立てを味わうというチャンスがなかった。私自身も十勝に何度も訪問するなかで、酪農王国としての十勝の魅力を改めて感じ、世の中に広げていきたいと思ったんです。酪農家さんの思いや、牧場の風景も含めて、そこにある食材と生産者のこだわりというものと組み合わせることによって、新しい気付きや発見を、できるだけ多くの皆様に届けていきたいと考えています。先ほど申し上げた「乳のおいしさ」というのはもちろんなんですが、そこに、出来たての体験価値を伝える工夫だったりとか、おしゃれなデザインとの組み合わせであったりとか、そういったことで乳の魅力をちゃんと伝えることで、受け取った側も豊かな生活になりますし、その魅力を届けることで、酪農家さんにも酪農の魅力を改めて感じて頂くことで、酪農と“ともに”豊かになっていきたいと考えています。
 今も、もっと乳製品を食べてもらえるようにみなさん色々と試行錯誤されていると思うのですが、乳や酪農というものが、これだけいいものだよ、これだけいい体験ができるんだよ、ということを伝えて、乳を食べる「理由」を持って頂く活動がすごく大事なんだなということをよく感じていますね。

──そんな藤本さんの思いの詰まった、新事業のこだわりについて教えていただけますか?

(藤本さん)いかに、体験価値、特に出来たての体験価値を工夫して届けるかだと思っています。 その1つが、先ほどお伝えした、カードを目の前で作って、店舗で出すというものなのですが、今、ご自宅でもそれができるようなモッツァレラも開発しています。その理由は、私もそうですが、食の大切さをしっかりと伝えたい親御さんが多い印象がある中で、ただ栄養があるとか、おいしいからだけでは、なかなか子供から興味を引けなくなっていると考えているからです。食事って非常に大事なんですけど、今はテレビや携帯といった、いろんな刺激の中で、その時間がすごく手間っていうふうに捉えられてしまっている時代で、それは心にとって豊かな時間じゃないのではないかと感じています。そのためには、食べれば美味しいけれど、何かわからないまま食べているというのではなくて、食に楽しく触れることができ、作った方の思いも感じられて、それで楽しい時間になるような、“体”で感じるおいしさをつくることに全力を注ぎたいと思っています。
 もう1つ、出来たての体験の重要な要素として、「旬を味わう」というものがあると思うのですが、ただ旬の食材と合わせるだけではなく、例えば、十勝の旬の風景の写真を買ってくれた方に添えて販売するといったことも、風景を見てこういう土地もあるんだなと思ったりとか、昔の思い出を想起したりとか、そういった豊かな時間につなげられると思うんです。 ですから、そういった工夫がすごく大事だなと思ってます。決して押し付けがましくない形で、いかにその工夫をするのか、というのが、FCSの名前についている「スタジオ」の部分なんです。何かそこから新しいワクワクだったりとか工夫だったり、みんなのアイデアを世の中に出していき、アルバムのようにしたいと考えています。
 それと、海外ですね。今回のカード自体は冷凍で海外に持っていけますので、十勝産のチーズが海外でも楽しめる、ということを、実現に向けてやっていきたいと思っています。

十勝産製品の新たな売り出し方、他の地域とのコラボレーション


──では、少し話題を変えて、十勝という地域の印象と、今後十勝でやりたいことをお聞きしてもよろしいでしょうか?

(藤本さん)私が十勝について強く思ったのは、大きい小さいという規模ではなくて、土地の1つ1つが魅力で、そこにかける農家さんや関わっている方々の思いや工夫が間違いなくあるということですね。それを踏まえて、十勝フェア以外ですと、十勝以外のものとの組み合わせをしてみたいなと思っています。それによって、新しい十勝の魅力が出てくるんじゃないかな、と考えています。例えば、カードを使って、高知県東部の豆腐屋さんと協働して、豆腐と一緒に販売したのですが、そこに十勝のフレッシュなモッツァレラを合わせることに違和感はありませんでした。高知県の出来たての食材を味わいながら、一方で、十勝のフレッシュな美味しさがあるという感覚が非常に重要で、大々的ではない地道な組み合わせでも、規模に捉われずにコラボレーションをすること自体によって強みが出ることを感じられました。そちらの方が地域の魅力発信に繋がっていくのではないかと思います。例えば、まだ十勝産の食品の魅力に気づいていない方が、地元の出来たての豆腐屋さんが好きで来られて、そこにフレッシュな出来たての十勝産チーズがあります、となった方が、こういう美味しい十勝産があるんだなという感覚を素直に持ちやすいのではないかということを非常に感じています。

──十勝と十勝以外の地域とのコラボレーションに可能性を見出しているのですね。では、その中で、現在進行中のプロジェクトについて教えていただいてもよろしいでしょうか?

(藤本さん)まず、2024年6月から8月まで軽井沢で実証店舗を期間限定でオープンします。その1~2ヶ月後ぐらいに、移動式工房も活用して、”できたて”を提供するというようなところを考えています。小売り販売展開については、さらに先の段階で臨みたいと考えています。

軽井沢でのブランドリリース発表でのひとコマ

移動式工房



藤本さんが目指すもの。楽しい食事のひと時を少しでも多くの思い出に。


──ありがとうございます。では次に、藤本さんご自身について、大事にしたいと考えていらっしゃる価値観などはありますか?

(藤本さん)私が大事にしていることは、「良いものは良い」とちゃんと言いたいということです。事業の規模だったり強さだったりなどは関係なしに、不器用な人が作ったものでもなんでも、それ自体がいいと思えたら、ちゃんと「良い」と言うのが、すごく重要だと思っています。また、私も小さな人間なので、本当にいろいろな人に支えられて今があるという風に思っています。ですから、できることは限られているなと思っていますし、もっと言えば、自分が何かをしたいというときに、そこからさらに「熱が広がっていく」ということをすごく感じるタイプで、その熱量をどんどん大きくするのがとても楽しいし、ワクワクするなと感じますね。あとは、なんて言ったらいいんでしょうか、何かを照らす日のようなというか、僕に会うと、なんとなくワクワクして、明るくなるような、ちょっと笑っちゃったよ、と言ってもらえるような人になりたいですね。その3つです。

──それでは、最後に、サービスを通してどのようなものを目指しているのか、それにかけている想いを教えてください。

(藤本さん)やっぱり楽しい食事のひとときを少しでも多く作りたい。食に携わってる人間なので、食事の時間がちょっとでも楽しかったとか、誰かと食べられてよかった、会話になったとかでもいいんですけれど、そういった時間を作ることがすごく意味のあることだと思ってます。それはやっぱり今の時代と逆行してると思うんですよね。できるだけ簡単に、便利に、コスパ・タイパ、 それが良しとされている今とは逆行してるんですけど、そうして何かを削っていくというよりは、今、限られた 30分の食事時間があれば、その30分をいかに楽しい時間にするかというのが僕は大切だと思っていて、それが20分で済んだというよりは、30分で1時間分楽しかったとか、1~2年経った時に思い出して、あの時間楽しかったよねと言える方がよっぽどいいじゃないかというのが私の考えです。もう、そこに尽きると思っています。
 FCSをやり始めて、体験会もそうなんですけど、 店舗に買いに来る方も結構誰かと一緒に来る方が多いんですよ。1人で買うっていうよりも、誰かと一緒に来て、これ美味しかったよねとか、これちょっと食べてみようというような方がすごく多くて。それって素敵じゃないですか。やっぱり時間を共有してる。その時間が大事だなって思います。

編集後記
“できたて”乳製品が食卓を共にする大切な人と調理されることで食事時間を温かい思い出に変え、”できたて”チーズの温かさによって生み出されるひとときが時を超えて持続していく未来が随所に想起される事業内容でした。温かな食事時間を国内のみならず世界にお届けできるよう我々もフレッシュチーズスタジオの活動を応援していきます!
(帯広市経済部 相部)


LINK

FRESH CHEESE STUIDO(フレッシュチーズスタジオ)ウェブサイト


協力

帯広市経済部経済企画課、フードバレーとかち推進協議会


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